紅茶には軟水か?硬水か?

紅茶には軟水が適しているというのが通説です。しかし、紅茶消費国の多くは硬水の地域が多いようです。軟水が適しているというのは紅茶のフレーバーと渋みがバランスよく出るからなのだそうです。
茶コラム『水の硬度』でもお話しましたが、ここで硬度のことを書いておきます。

水の硬度とは、水中のカルシウム塩とマグネシウム塩の総和を炭酸カルシウムの量に換算した値のことです。
水1000ml中に炭酸カルシウムがあるものを「硬度1」とします。そして、硬度200以上を硬水。硬度100以下を軟水と呼んでいます。
また、詳しく分類すると、沸騰させると硬度が低下する一時硬水と、沸騰させても減らない永久硬水があり、ヨーロッパの水はその永久硬水が多いようです。日本は20〜80の軟水が多いようですが、ヨーロッパでは200〜400の硬水が多いようです。
この硬度によって紅茶は同じ茶葉を使用しても水色・渋み・香りが変化します。
軟水だと、水食は明るく、渋み、香りは強くなります。
硬水で淹れると水色は暗く、渋み、香りは弱くなります。

だからスリランカやインドで飲んでいるスタイルをそっくりそのまま日本で真似して見ても何だか微妙に味が違ってきます。

その逆もそうです。日本や中国で美味く感じられたお茶がイギリスで飲むとなんだかパンチの弱いものになってしまうのはイギリスの水質が硬水だからなのです。
イギリス人はこの色は濃いが味と香りの弱いお茶から自分たち口にあったパンチの強いものを求めます。
求められた方は何をどうしたらいいのか分からず試行錯誤しますが、やがて完全発酵させたお茶というのを作り出します。これが紅茶のはじまりで1600年頃から作られはじめたといわれています。


紅茶本来の香りや味などを際立たせるために適している水は軟水であるということは科学的に立証されていますが、紅茶を大量に消費している多くの国々の水は硬水です。
イギリスが茶を求めるようになり、中国からした茶は中国の水であればこそその茶本来の香りや味わいが出るものでした。
水質の違いを当時のイギリス人が知っていたかどうかは知りませんが、彼らはその茶にもう少しパンチのきいたものを求めるようになり、やがてそれが完全発酵茶である紅茶の誕生となったのです。

水質の違いから誕生した完全発酵茶「紅茶」が需要側の水質よりも供給側の水質にあっているというのは何だか皮肉な感じがしますが、それはあくまでも科学的に軟水の方が紅茶本来の香りや味を引き出すという話です。

紅茶の歴史は緑茶の歴史に比べたらまだまた浅いものですが、それでも各地で根付いた紅茶の飲み方はその土地ならではの喫茶方法によってさまざまなバリエーションがあります。
インドではCTCや細かい茶葉を利用してチャイをつくります。スリランカではキリテーやカハタといった飲み方、トルコではチャイと名前は付いていますがストレートの紅茶を飲みます。

それらの地域別の紅茶は別に水の硬度が高いからとか低いからとか考えて作られたものではないでしょう。
生活飲料として作られそしてそれが美味しく飲めるものになったのだと思います。

実際にインドやスリランカで飲んだ紅茶は抜群に美味いものでした。
日差しの強い地域では甘味の強い紅茶が良く合うのです。中にはそれにスパイスを入れているところもありました。チャイを飲み干した後に清涼感を感じたのは外国人の私だけではないはずです。

地域にあった紅茶を飲んでみて分かったことは、紅茶に向いている水質は硬水か軟水か?なんていうことではなく、各地域で長い年月受け継いできたその喫茶方法こそが一番なのだということでした。

またまたいつものように話が脱線してしまいましたが、結局のところ「紅茶には軟水が適している」というのは科学的な分析によるもので決めつけてはいけないんだということです。